ぶれめ堂では、ゲームを出す時に結構な量のシナリオを書き込んで世界観の設定を決めます。
一般的なゲーム会社などがどうやっているのかは知りません。
そもそもゲームなんて作ったことが無い人で作っているので・・・・。
今日はアップルジャム(バージョン1)を出す前に用意したシナリオの一部を出します。
ただ、ゲーム開発中に色々と変更になったりしているため、現状のゲーム内とは微妙に差異があったりしますし、登場しない人物がいたりもします。
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短い草が延々と続き、夏になるとその上空をトンボの群れが飛び交う。
小さな川に沿って道が続き、その途中に広がる畑。
さらに進むと、程なくして水車が回る小屋が見える。
小屋には母と、その子であるクルトの二人暮らしだった。
二人は、日々実をつける作物を籠に入れ、数キロ離れたブリームの村で売ることで生計を立てていた。
それはクルトが17歳になった日だった、いつもの様に前触れもなくやって来たムロアは腰に大きな斧をさして現れた。
幼き頃に死んだ父の親友であったムロアは、ブリームの村より北にあるフォルオスの街に住んでいたが、ブリーム方面で狩をした際には必ずクルトの家に顔を出し、母のお手製ホットミルクティーを飲むのだった。
扉を開けたムロアはあごを動かし、クルトに外に出るように指示した。
木彫り人形を作っていたクルトは、すぐに手を洗い、言われるがままに外に出た。
ムロアはその太い腕で、大きく斧を一振りすると、ピタッと動きを止め、日の光で反射する刃の先をじっと見つめていた。
その様子は雄々しく、そしてどこか美しく、まだ若いクルトにはムロアがとても遠い存在の様に感じたのだった。
「お前の父さんが使っていた斧だ」
ムロアは斧の刃先を指で撫でながらそう言った。
「残念ながらあいつは体力のあるタイプでは無かったからな、この斧もこんなに綺麗なままだ」
そしてムロアは斧をクルトに手渡した。
見た目はしっかりとした作りにも関わらず、それほど重さを感じない事にクルトは驚いた。
「しかし手先が器用な奴でな、この斧もお前の父さんの作品だ、どうだ?そっけない作りだが握りの感触、刃のツヤ、振るとわかるが空気を切る感触はまさに芸術だ、ほら、振ってみろ」
クルトはぎこちない動きで、父の斧を振ってみた。
「クルト、お前は生まれてから17年間、お母さんと一緒に過ごしてきた、きっと明日も、お前は籠に野菜を入れて、ブリームの村に行くのだろう」
クルトはムロアの言いたいことがわからず、どういう顔をすべきか悩んだ。
「俺とお前の父さんはな、この斧で、邪神ヴァジュラを共に倒すと誓い合ってたんだ、ヴァジュラは知っているか?」
フォルオスの者でもブリームの者でも、邪神ヴァジュラを知らぬ者などいるはずも無かった。
かつてアースガルド王国にいたゼキリルという大臣、彼は強欲から国を追放させられ、強盗によって命を落とした。その怒りの念が形となり創りだしたとされる邪神である。
クルトは当然だという表情で頷いた。
「いいかクルト、アースガルド王国に、三人の神官がいるのは知ってるか?」
「もちろんだよ、三神官による毎日の祈祷のおかげでアースガルド神のちからを借りてヴァジュラを遠ざけてるんだから」
「そう、問題はそこなんだ、三神官はいずれもかなりの高齢だ。先も長くはないだろう。しかし、アースガルド王国には三神官を超えるちからを持つ者がいないんだ」
「え・・・・・?三神官の体調に問題でもあるの?」
「いや、そういう訳では無いが、三神官のひとりでも欠ければ、ヴァジュラを遠ざけ続けられるか怪しいのも事実だ」
「そんな・・・・」
「そんな危うい状況のアースガルド王国だがな、その三神官と変わらぬ素質を持つ男を見つけたのだ・・・・」
「よかった、その人はアースガルド王国の人なの?」
ムロアは首を横に振った。
「しかし残念ながら、その男はもうこの世に居ないんだ、お前の父さんだからな」
「え?父さんが三神官と同じちからを!?」
「お前の父さんはな、三神官のひとりであるキージャの子で、クルト、お前はキージャの孫なんだ」
「ええええええええええええ!!!嘘だ!!」
「嘘だとどれだけ良いか・・・、父さんはな、三神官に手が出せないヴァジュラの策略で殺されたんだ」
「・・・・・そんな・・・・・」
「野菜をブリームの村で売る毎日は一旦中止だ、キージャが生きている間に、お前はキージャに会わなければならない。」
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